朝起きたら
窓の外には雨が降っていた。
その雨は強く、強く
目の前の寝室の窓を叩いていた。
絡まった布団を蹴り上げ
体を起こし、洗面台で顔を洗う。
少し草臥れた歯ブラシに
残り少ない歯磨き粉をこすりつけ
咥えたままソファに腰掛ける。
そして、テレビのスイッチを押す。
そんな毎日の入り口。
それはよくある景色のよくある話。
テレビのスイッチは壊れていて
本体から電源を入れないと、つかない。
音量やチャンネルの調節は可。
これはちょっとだけない話。
流れるニュースの映像で、ふと
「何人の人が死んだだろう」
不謹慎にもカウントする。
たった30秒で4人。
もう30秒で2人。
どこの国の誰かも知らない人なんて
ぶっちゃけどーなったってどーでもよい。
でもその知らない人の誰かを知ってる人は
とても悲しい思いをしているんだろう。
知ってる人なら僕は
なんて思うんだろう。
先週知ってる人が死んだ。
なんか泣けなかった。いや泣いたんだけど。
泣こうとして泣いた感じがした。
そんな事を思い出しながら
ふと我に返る。
口に溜まった白泡を
勢いよく吐き出し、口を濯ぎ
コンタクトをはめた。
そして洗面台に写るそいつを見て
「よし」と煽った。
僕はもういい大人だから
自分のこといい加減諦めるの
辞めようと思った。
そんなありそうでない話。
終わり。